変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

カテゴリ:企業応援 > マーケティング・営業

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山口県萩市は観光業が主要産業。このご時世、春が来たというのに観光客数が伸び悩み飲食店や旅館は非常に苦しい状況に立たされています。明日の生活もままならないという切実な声があちこちから聞かれるようになりました。

ただ、団体客を当てにしていた大規模な旅館や食事処の打撃は大きい一方で、個人客がメインのゲストハウスやレストランはまだましなようです。

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もっともこの騒ぎが始まる以前から個人客の割合は増えており、(一社)日本旅行業協会の統計では2016年時点で個人旅行が8割近くのシェアを占めているとされています。その変化に対応できなかった業態の事業者が苦戦しているとも言えそうです。

島根県松江市ではこの状況が収束したのちに個人旅行者を取り込むために「おせわさん」というサイトを活用しようとしています。これは個人の旅行者とおもてなしをしようとする地元の人をマッチングするサイトで「水引のアクセサリー制作」「日本刀の体験」「お菓子と日本語の教室」といったユニークな「おもてなし」が掲載されています。

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もっとも私が萩にはまったきっかけもゲストハウスに宿泊し、その場で予約した銀細工をやったことからでした。そのときは2日間にわたり作業をしたためにほとんど観光地を回ることはできませんでした。けれどもそのことが却ってそこで出会った人との繋がりを濃密にし、何度も通いたくなるほどの魅力に取りつかれてしまったのです。

個人客が増加した理由の一つとして、スマートフォンの普及が挙げられます。情報はガイドブックではなくインターネット上にあふれており、個人でも観光地を動くことが容易になりました。そしてSNSを通じて人と人が繋がりやすくなり、旅する人ともてなす人の出会いが新たな観光の価値を生み出しているのではないかと思います。

「松江流アクティビティ」ポータルサイト おせわさん
https://jp.matsue-osewasan.com/

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このご時世さまざまなイベント自粛になる中、地域の小規模なイベントには十分な注意を払いながら参加させてもらうようにしています。イベントといっても友だちの友だちくらいまでが参加するもので、ちょっとお茶をしに行くような感覚のものです。

そのような規模のものでも自分たちの生業を披露しながら時を過ごしていきます。

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人口減少が進む地方では、競合が少なく家賃などの固定費も低く抑えられる傾向にあることから、大都市よりも小さなビジネスを始めるには適しています。

しかし、逆に言うと競合が少ないのは市場規模自体が小さいからで、新規参入してきた事業者が新規顧客を増やすことは容易ではありません。

そのようなことからたとえ小規模でもこうしたイベントに参加することは、顧客の輪を少しずつながら広げていくことができ、格好のPRの場であるといえます。

そして今は、SNSの時代。出店していることを友だちの友だち、さらにその友だちくらいにまで認知を高めることができます。しかも、友だち同士の信頼感を通して情報が伝えられるので、顧客になってくれる可能性はぐっと広がります。

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ひととの繋がりはたとえ小さなものだとしても絶大な力を持っています。この騒ぎが早く終息することを願いつつ、人と繋がる機会があるのなら十分な注意を払いながら、できるだけ参加してそのつながりを広げていきたいものです。

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本日、萩インキュベーションセンターにて「はぎビズ」が開設されました。萩市が中小企業やスタートアップ企業向けに無料で経営に関する相談を受け付け、売上アップをサポートする仕組みです。

センター長に化粧品業界のブランドマネージャーなどを経験した獅子野さんを迎え、販路開拓や新商品・サービス開発を中心にサポートします。予約をすれば1時間の相談が受けられ、そのあとも何度でも申し込みが可能です。すなわち単発の相談で終わるのではなく、継続的にサポートが受けられるのが特徴です。

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「はびビズ」は静岡県富士市の「f-Biz」をモデルとしています。自治体が経営の専門家を集め、すべて無料で相談を受け付けています。すでに同じモデルを活用した〇-Bizは、大阪府大東市や長崎県壱岐市など全国に20か所以上もあります。

これまで自治体の中小企業支援策というと、補助金など直接的に金銭補助をするものがメインでしたが、こうした情報提供を主体的に行うのは画期的です。実際、地方に住んでみると東京などの大都市に比べ情報が圧倒的に不足しているということを肌で感じられます。資金的な援助よりも行動につながりやすい「知恵」の提供の方がニーズが多いということの表れなのではないかと思います。

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地方には豊かな自然や、歴史ある建造物などまだまだ眠っている資源がいっぱいあります。そこに「知恵」が注入されることにより新しいビジネスが生まれ、面白いことが始まる予感がしています。

萩市ビジネスチャレンジサポートセンター・はぎビズ
https://www.city.hagi.lg.jp/soshiki/49/h28853.html

富士市産業支援センターf-biz
http://f-biz.jp/



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夕方の地方ニュースを見ていたら、萩市の明倫学舎という観光施設で、マンホールカードが配布されるという話題が流れていました。マンホールカードというのは、下水道への理解・関心を高める目的で、下水道工法プラットフォームが発行するゲームカードのようなものです。全国のマンホールの絵柄が印刷され、現在累計502自治体、605種が存在します。

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ご当地でこうしたカードを配布することで、カードを目的に観光客が来訪することが期待されます。そのターゲットはすなわちこうしたものを集めたがる収集癖のある人ということになります。収集癖をもった人には「さみしさを紛らわしたい」「人より優越感を味わいたい」といった複雑な心理があるとも言われています。

であるとすると、カードを入手するという目的が達せられるとすぐに帰ってしまうという可能性も大いに考えられます。かつて流行ったビックリマンチョコで、カードを手に入れられたらチョコレートを捨ててしまう子どもが現れ社会問題となったのと同じです。

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ならば、その地で見られるマンホールの種類を増やしてしまうのが得策です。たとえば、夏みかんが一つ多いレアマンホールを萩市内のどこかに設置すれば、それを探すために街中を回遊してくれるでしょう。

マンホールをうまく使って街おこしをしているのは、静岡県の沼津市です。沼津市はアニメ「ラブライブ」の舞台となっており、9人のキャラクターと校章や全員集合した絵柄など計11種類のマンホールが街中にちりばめられています。しかも、4か月に1回ずつカラーマンホールになるキャラクターが入れ替わり何度も来訪したくなる仕掛けになっています。

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何かのファンというものは収集癖が強く、それを飽きさせない仕掛けがあってさらにファンが育っていくものです。ファンを飽きさせないようにするには常に種類やシリーズを増やしていくのことが求められます。

マンホールカード(下水道広報プラットフォーム)
http://www.gk-p.jp/activity/mc/

ラブライブ!サンシャイン!!マンホール(沼津市)
https://www.city.numazu.shizuoka.jp/kurashi/sumai/gesui/topics/h30/secchi.pdf

dental

少し歯が痛くなったといって歯医者へ行くと、初日はレントゲンをとってちょっと歯を削る。次の回はさらに削ってセメントで埋める・・などといって何回も歯医者に通うことになります。で、治療が終わったら、「親知らずがありますが抜きますか?」「歯石を取りますか?」と別の場所の治療も勧めてきます。

歯医者にとって患者さんが大事なお客様であることを考えると、これは非常に大事なマーケティング施策であるといえます。同じ患者さんが歯の悩みについて必ず自分のクリニックに相談をしてくれるようになればいわゆる生涯価値(LTV)が上がり、大きな収益を上げることができるからです。

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最近では、「デンタルテック」とよばれるハイテクノロジーも駆使して、顧客(患者)の獲得、つなぎ止めを図ろうとする動きもあるようです。

大阪のスタートアップ企業ノーブナインが開発した「スマッシュ」という歯ブラシは、センサーで「メチルカプタン」や硫化水素を検知して歯周病があるかを調べることができます。このデータをスマホで確認できるようにして歯科医に相談するきっかけをつくろうというのが狙いです。

ノーブナイン社は月額980円で小児の歯の相談がいつでも受けられる「ブラシる」や、オーラルケアのプロが選んだ歯ブラシを定期配送するといったサブスクリプションモデルのサービスを既に提供しています。

もしかすると「スマッシュ」を利用して歯周病治療や予防のサブスクリプションサービスを開始することも視野にあるのかもしれません。

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さて、最近よく耳にする「サブスクリプション」ですが、ニック・メータ、ダン・スタインマン、リンカーン・マーフィーらの著書によれば、顧客の成功すなわち「カスタマーサクセス」を第一に考えてマーケティング施策を実施することが最も大事であるとされています。

実はこの「スマッシュ」という歯ブラシ、一台5,000円~8,000円とハイテク機器にしては割安です。歯ブラシそのものを売るのではなく、スマホでの歯の状態管理や相談によって「顧客の歯を健康に保つ」ということを提供価値にして収益を得ようとしていることが、このことからも読み取れます。

日本経済新聞 2019年5月6日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44265690W9A420C1FFR000/ 

参考図書
ニック・メータ、ダン・スタインマイン、リンカーン・マーフィ著
バーチャクレス・コンサルティング 訳
「カスタマーサクセス ~サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」(英治出版)
http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2260

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