変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

カテゴリ: 憲法

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今日、1月27日は大事な記念日。そんなアラートがFacebookを開くと出てきました。8年前の1月27日から私はFacebookを開始したのだそうです。本名をネットにさらしてやり取りをする?なんて最初は疑問に思ったものですが、いろんな人とのつながりが出来る楽しさが先行して、今ではFacebookの画面を開かない日はないほどです。

しかし最近ではFacebook上の個人情報流出が発生し、当初心配していたことが現実のものとなってきてしまいました。日本では通信の秘密を守る保護制度がありますが、外国企業に対してはその規制の枠外に置かれているのが現実でした。

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総務省も「通信の秘密」の保護について、海外のIT企業にも国内の通信会社と同様の義務を負わせる方向で動き出したそうです。今日の日本経済新聞の社説ではこの動きについて歓迎しています。

その中で、昨年海賊版封じ込めのためにブロッキングの法制化をめざしたものの「憲法が保障する通信の秘密を侵害しかねない」として廃案になったことを引き合いに挙げ、海外企業に対してはその「通信の秘密」が守られていないと指摘しています。

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さて、この点について海外企業に「通信の秘密」を守らせなければならないのはもっともなのですが、実は憲法の観点からすると論点を正しく整理しておく必要があります。

それは憲法は、あくまで国などの公権力から「通信の秘密」を守っているのであって、私企業を対象にしていないということです。昨年のブロッキング法制化が問題視されたのは、ブロッキングの判断を下すために国家による通信監視が行われる恐れがあったためです。

これとは別に、高度情報化社会の進展とともに「自己情報コントロール権」をいう考え方が提唱されるようになっています。これは自己に関する情報を他人が取得、利用、第三者に提供することに対してコントロールを及ぼすことができる権利とされています。

総務省が海外企業に対して規制をかけるのはこの「自己情報コントロール権」を実現させるためのものであるといえます。

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ともあれ、怪しいメールや広告がネット上に飛び交うなか、国境を越えた「自己情報コントロール権」が早く確保されることを願うばかりです。

日本国憲法
第21条2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

日本経済新聞 2019年1月27日(日)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO40529710W9A120C1EA1000/ 

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1995年の1月17日朝、横浜の実家でテレビをつけた私は神戸の街の変わり果てた姿に驚愕しました。ビルや高速道路が倒れ、火の海に包まれる街を見て、元の姿に戻るのに一体この後どのくらいの月日が必要なのだろうと茫然としていたのを思い出します。

24年の歳月がたち、街の姿はすっかり様変わりしました。しかし、今度は人口減少という大きな問題に神戸市は直面しています。2012年以降は人口減少に転じ、東京のベッドタウンとして人口が増加している川崎市にも抜かれそうな状況です。

関西圏では人口増が首都圏にくらべ伸び悩んでいることから、大阪のベッドタウンとしての位置づけでは人口減少は止められません。そこで市は、神戸の中心市街である三宮地区でタワーマンションの建設を規制する条例を制定することを目指しています。

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計画的なまちづくりを行うために区画を定め建設できる施設を規制する法律としては他に「都市計画法」があります。都市計画法では用途地域という区分で都市の開発用途を13の種類に分け、用途以外の建設を制限することができます。

しかし、タワーマンションなどの高層の建物を制限できるのは、第一種低層住宅地域、第二種低層住宅地域、工業専用地域の3種類だけでいずれも商業施設がひしめく三宮地区に指定することは適当ではありません。

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そこで条例を制定して制限するということにしたわけですが、法律で既に定められた内容と異なる規制を独自にかけられるものなのかという疑問が浮かびます。

憲法94条では「法律の範囲内で条例を制定することができる」としていますが、これに対しては法令・条例それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し矛盾がなければ、条例により法令より厳しい規制をかけることは可能という判例があり、条例にある程度の自由度が与えられています。

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災害からの復興や街づくりは、地域の事情に合わせてこそ、その地域に息吹が吹き込まれるというもの。憲法においても自主性が尊重されています。

日本国憲法
第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、および行政を執行する機能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

日本経済新聞 2019年1月14日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39946780R10C19A1ML0000/ 

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そういえばもう15年近く海外旅行に行っていません。おかげでパスポートの有効期限も切れてしまいました。したがって次に海外に行くときには新たにパスポートを発行してもらうように申請しなければなりません。住民票やら身分を証明する書類(今ではマイナンバーカードでもよいようです。)を取り揃えて面倒な手続きをしなければならないのでついほったらかしになってしまっています。

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しかし、ブロックチェーンという技術が発展するにしたがってそのような面倒な手続きが、ネット上ですべて完結する可能性があります。住民票やマイナンバーカードは、地方自治体や国がその人の身分を証明するものですが、ブロックチェーンでは参加者が互いに承認する仕組みで、国家を介さずに存在を証明することが可能です。

実際、スイスやエストニアではブロックチェーンを利用してスマートフォンやIDカード一つで行政サービスを受けられるようになってきています。

また、この技術によって、さまざまな理由により戸籍を持つことができずにいるいわゆる「無戸籍者」も恩恵をもたらすことができます。

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我が国では、夫の子ではない子が生まれそれを認定する嫡出否認権が夫にしかないことから、DVなどが原因で離婚した妻が前夫にそれを請求することができず、無戸籍になってしまう子どもが生じる問題が発生してしまっています。この問題は現在、夫にしか嫡出否認権がないのは憲法14条1項が保障する法の下の平等に反するとして裁判でも争われています。

こうした無戸籍者はパスポートの発給はおろか、銀行口座が開設できない、進学や就職に不利になるといった不利益を被ることになり生まれてきた子どもにとっても不平等な状況が発生してしまいます。

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新しい技術によって個人を証明することができるようになると国とその恩恵を受ける国民の関係も大きく変わることが予感されます。

日本国憲法
前文より
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民が享受する。これは、人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。

第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
第14条1項 すべての国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。

日本経済新聞 2019年1月6日(日)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39585160Q8A231C1SHA000/ 

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平成30年が終わろうとしています。今年は私にとっても厄年、とても災害の多い年だったように思います。とくに大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号と春先までずっと暮らしていた関西地方に大きな被害をもたらした天災が襲ったことは非常に心苦しい限りでした。

近くに住んでいればもっといろいろできたものの、ボランティアとして行けたのは地震の片付けにかつての居住地、高槻に行った1回だけでした。地震後1か月でまだ屋根にブルーシートがかけられた家も多くありましたが、普段の生活を取り戻しつつある姿を確かめられたことは私にとっても一つ安心でした。

かつてに比べて、災害ボランティアへは参加しやすくなっていると感じます。1995年に起きた阪神大震災の時には、学生で時間のある身分でありながらどうやって参加するか分からず何もできずにいました。それだけこの20数年のうちにボランティアを活かす仕組みが整ったといえます。

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災害対策基本法でも、その基本理念で「国、地方公共団体その他の公共機関の適切な役割分担及び相互連携する」とともに「住民一人一人が自ら行う防災活動及び自主防災組織その他地域における多様な主体が自発的に行う防災活動を促進すること」と定め(第二条の二)、ボランティア活動を含めた自助・共助の活動と連携することが求められるようになりました。

この法律の目的は、「国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護」(第一条)ことにあり、憲法が保障する生存権や財産権を守ることが目的であるといえます。

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一方でこの目的を達するために、災害時に法律で対応しきれない事態に備えるため、例外的に行政に強い権限を持たせ避難経路の確保やがれきの処理を迅速に行えるようにする、緊急事態条項を憲法にもたせるべきという考え方があります。この場合、国が中央集権的に地方公共団体やその他団体を指揮しながら災害への対応に当たることになります。

ただ、緊急事態条項はこれにより財産権やその他の人権を一部制限することからその取扱いは慎重にならざるを得ません。また、国が現場のすべての情報を把握し正確に指揮をとることができるのかという現実的な問題もあります。

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平成は、数多くの災害に見舞われた時代でもありましたが、その一方でボランティアという自主的な助け合いの力が芽生えた時代でもありました。次の時代にもこの力を活かし育てながら、今後やってくるであろう難しい課題にも立ち向かえる社会が育つことを願うばかりです。

日本国憲法
第13条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第25条1項 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第29条1項 財産権はこれを侵してはならない。

日本経済新聞 2018年12月31日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39492820Y8A221C1947M00/

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今日はクリスマスイブ。クリスチャンでない限りクリスマスは子どものためのイベントだとずっと思っているので、私にはここ何十年も縁がありません。もっとも、自分の子どものためにクリスマスプレゼントをあげたり、ケーキを家族で食べていたりしていてもいい年齢であることは自覚しています・・・

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私の場合は半分は自分の意志で一人の生活を選んでいるようなものですが、世の中には病気などで子どもが欲しくても子どもを設けられなくなってしまう方もいらっしゃいます。男性が若い時代にがん治療をうけると生殖能力を失ってしまう、そんなことがあるのを今日の日経の記事で知りました。

NPO法人がんノート代表理事の岸田徹さんは25歳のころにがんが見つかり抗がん剤による治療を受けたそうです。その際、医師に勧められ生殖能力の維持のために精子を保存を決断しました。しかし、その費用に国民皆保険の制度は適用されず自費で負担したそうです。

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国民皆保険は戦後、日本国憲法が制定され第25条第2項で生存権に対する社会権を保障されたのをきっかけに、社会保障制度が整備された流れでできた制度で、農業従事者や自営業者まで含めた国民全員が保険に加入するという世界的にみても画期的な制度です。

しかし、前述の精子保存に関しては本人の生存権とは関わりがないことから国にその保障を求める社会権が存在しない、という解釈をすることができそうです。

一方で少子高齢化が進行することにより保険料を負担する世代より給付を受ける世代の割合が増え、国民皆保険制度自体の存続も危うい状況にさらされつつあります。国もあわてて子育て支援策や不妊に悩む夫婦への支援策も実施してはいますが、即効性は期待できず危機的状況を脱する見通しは立っていません。

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家族の在り方や子どもを持つ持たないなどについては、国が決して介入すべきことではありませんが、少し乱暴な言い方をすれば既に生を受けた国民の人権保障のみに目を奪われ、将来生まれてくる世代の幸福を保障しきれなくなってきているのであれば、日本国憲法がカバーしきれていない盲点であったのかもしれません。

日本国憲法
第11条 国民は、すべての基本的人権の享受を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在および将来の国民に与えへられる。
第25条第1項 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
    第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本経済新聞 2018年12月24日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39238280R21C18A2TCC000/ 

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