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今年の5月、熊本地震が発生した3週間ほど後に私は一度ボランティアとして熊本市に入りました。その後、市のボランティア活動は落ち着き規模を縮小していっているようですが、未だ避難所暮らしが続いている方もおり、不幸にもエコノミー症候群などにより避難所で亡くなる方もいらしたようです。

避難所の空間や安全、設立までの迅速さに問題があると考えた新潟大学の榛沢和彦講師は、「避難所・避難生活学会」を設立し、避難所の環境改善を訴えていくそうです。しかし、日本では法律により、災害援助は国や自治体の責務とされており、ボランティアや企業の支援には多くの制約があるのも実情であり、こうした法制度の見直しも提言する考えとのことです。

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日本国憲法第25条では、国民の生存権を規定しています。この条項においては、これを具体化する法律によって国家への権利請求ができるとする「抽象的権利説」が通説であり、災害援助においても国や自治体が国民や住民の生存権を確保するために様々な法律が定められているものと考えられます。

しかし、1995年に起きた阪神・淡路大震災では、救助された人の9割は、自力で脱出したか家族や隣人に救出され、救急隊等に救出されたのは1割にも満たないという調査もあり、国や自治体による災害時の生存権の確保には限界があるという見方が広がっています。

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ところで、国家による生存権の確保をより確実なものにするために、憲法を改正して「緊急事態条項」を盛り込むという案が浮上してきています。しかしこれには発生しうる「緊急事態」をどのように定義したとしても独裁的な権力を許容し、立憲主義を揺るがす恐れがあるという「国家緊急権のパラドックス」という問題が存在します。

災害時の1分1秒を争う状況では、やはり国に情報を集中させ適切な対応をとることには限界があり、こうしたリスクのある法制に頼るよりは、「自助」⇒「共助」⇒「公助」の優先順位で常に災害に備えておくことの方が現実的ではないかと思われます。

日本国憲法 第25条
①すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本経済新聞 9月25日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO07546780T20C16A9MY1000/