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以前、マルクスの資本論を読んだ(というか字面を追った・・)と言いましたが、数年前に出版されたトマ・ピケティ氏の「21世紀の資本論」も読んでみました。(まだこちらの方が読みやすかった)彼の理論によれば、投資などによる資本の収益率が労働などの対価として得られる所得の成長率を上回り貧富の格差を拡大させる構造を資本主義が根源的に持っている、と警鐘を鳴らすものでした。

こうした資本主義を否定する論調が、日本を含めた先進国で盛んになっているそうです。背景には、世界的に成長が弱まり若年層を中心に高失業や賃金停滞が顕著となる一方、富の集中が発生して貧富の格差が広がるというピケティ氏が指摘した事が社会現象として顕在化していることにあります。結果的に既存の経済・政治システムへの不信が拡大し、極端な政策が実現しかねない状況にあると記事では指摘しています。

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資本主義は私有財産を法により保障し、自由競争で富を生み出すもの。人々のやる気や創意工夫が反映につながるということを想定しています。日本国憲法第29条1項でも私人の財産権を保障しておりこの考え方に倣ったものとなっています。

他方、第29条2項3項においては、公共の福祉のためにこれを規制出来る事も示しています。様々な業界に対して敷かれる規制や、貿易にかかる関税やその違反に対する財産の没収などがこれにあたると考えられます。富の拡大が停止し国民への福祉の実現がおぼつかなくなれば、「公共の福祉」のために規制や関税の幅が広がるということも考えられなくはありません。これは自由競争と言う観点から見れば矛盾したものとなります。

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企業が目先の利益にとらわれずに想像力を発揮し、社会の課題解決につながる成果を出す事が資本主義の復権には必要であると記事では説いています。
加えて、規制や関税といった保護主義的な志向ではなく、ピケティ氏が提唱したような「世界的な資本税」の導入などにより国際社会共通の「公共の福祉」の枠組みを固めることも重要なのではないでしょうか。

日本国憲法第29条
1.財産権はこれを侵してはならない。
2.財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3.私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

日本経済新聞 8月28日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO06538580W6A820C1TZD000/