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大都市のイメージがある大阪ですが、実は一か所だけ「村」があります。金剛山を背に奈良県との県境に位置する千早赤阪村。私も千早川のマス釣りなど何度か訪れたことがありますが、車があれば大阪市内からも小一時間の位置にこれほど自然が豊かな山里があるものかと感動したものです。しかしながら、全国の「村」と同じように過疎化に悩む自治体の一つでもあります。

千早赤阪村は2040年には人口が3,000人程度と現在の6割程度まで落ち込むと独自の予想を立てており、人口減に歯止めをかけようと躍起になっています。
まず、コンビニを誘致するために出店費用の半額負担(最大300万円)、当初3年間の損失半額(最大年100万円)負担を約束する制度を制定。そして移住者のための空き家バンク制度の創設。さらには外国人観光客を誘致するための古民家を利用した民泊の取組み。
村での生活の利便性を高めつつ、人を呼び込むための施策を次々と打ち出しています。

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人口減少は、出生率の低下から日本全体を覆う現象として予測され、全国の自治体が取り組まなければならない課題となっています。それだけに環境の変化に応じて自らの強みを生かし、他の自治体と差別化を図らなければ定住者の確保は難しくなってくるものと思われます。
 
そのような中で千早赤坂村の強みとなりうるものは①豊かな自然とそれを生かした第一次産業②大阪や堺への通勤も可能であること③関西空港からも近い位置にあること、などが挙げられます。
③については外国人観光客の誘致に有利といえますが、世界経済の行方は予想が難しく長期的に村内の産業を支えられるかは不透明です。
そのために①②を生かす施策が必要となりますが、コンビニの誘致と空き家バンク制度だけでは最低限の環境を整えたにすぎず、強みを生かしているとまでは言えません。

すなわち、これだけでは人口減少を食い止めるのは難しいものと考えられます。もう少し長期的な視点に立った戦略が必要であるといえます。

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平成23年度に制定された千早赤阪村の第四次総合計画では、千早赤坂村の将来像として「夢を持って子育てができる 金剛山(こごせ)の村」という理念が掲げられています。確かに千早川の清流や美しい棚田に囲まれて子どもがのびのびと暮らせるのはとても魅力です。次の一手として子育て世代が如何に暮らしやすい環境を作れるかが鍵を握るのではないかと思われます。

日本経済新聞近畿版 5月28日(土)付 朝刊より