dental

少し歯が痛くなったといって歯医者へ行くと、初日はレントゲンをとってちょっと歯を削る。次の回はさらに削ってセメントで埋める・・などといって何回も歯医者に通うことになります。で、治療が終わったら、「親知らずがありますが抜きますか?」「歯石を取りますか?」と別の場所の治療も勧めてきます。

歯医者にとって患者さんが大事なお客様であることを考えると、これは非常に大事なマーケティング施策であるといえます。同じ患者さんが歯の悩みについて必ず自分のクリニックに相談をしてくれるようになればいわゆる生涯価値(LTV)が上がり、大きな収益を上げることができるからです。

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最近では、「デンタルテック」とよばれるハイテクノロジーも駆使して、顧客(患者)の獲得、つなぎ止めを図ろうとする動きもあるようです。

大阪のスタートアップ企業ノーブナインが開発した「スマッシュ」という歯ブラシは、センサーで「メチルカプタン」や硫化水素を検知して歯周病があるかを調べることができます。このデータをスマホで確認できるようにして歯科医に相談するきっかけをつくろうというのが狙いです。

ノーブナイン社は月額980円で小児の歯の相談がいつでも受けられる「ブラシる」や、オーラルケアのプロが選んだ歯ブラシを定期配送するといったサブスクリプションモデルのサービスを既に提供しています。

もしかすると「スマッシュ」を利用して歯周病治療や予防のサブスクリプションサービスを開始することも視野にあるのかもしれません。

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さて、最近よく耳にする「サブスクリプション」ですが、ニック・メータ、ダン・スタインマン、リンカーン・マーフィーらの著書によれば、顧客の成功すなわち「カスタマーサクセス」を第一に考えてマーケティング施策を実施することが最も大事であるとされています。

実はこの「スマッシュ」という歯ブラシ、一台5,000円~8,000円とハイテク機器にしては割安です。歯ブラシそのものを売るのではなく、スマホでの歯の状態管理や相談によって「顧客の歯を健康に保つ」ということを提供価値にして収益を得ようとしていることが、このことからも読み取れます。

日本経済新聞 2019年5月6日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44265690W9A420C1FFR000/ 

参考図書
ニック・メータ、ダン・スタインマイン、リンカーン・マーフィ著
バーチャクレス・コンサルティング 訳
「カスタマーサクセス ~サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」(英治出版)
http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2260