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私の母は、私が中学生のころにニットの帽子を作る内職をしていました。もともと編み物が得意で、私たち兄弟のセーターや手袋をはじめ、ぬいぐるみなども作っていた記憶があります。その腕前を活かし専業主婦をやる傍ら空いた時間で毛糸から冬にかぶるニット帽を編み上げて、業者に納めていました。それほど大きな稼ぎにはなっていなかったようで大変だったようです。

しかしもし、当時インターネットが今のように普及していたら働き方も少し変わっていたかもしれません。

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Web制作などの分野で広がりを見せているクラウドソーシング。インターネット上で依頼したい仕事を提示し、一定のスキルをもったフリーランスや事業者がこれに応募する形で業務を委託する形態です。
最近ではデジタル分野のみならずアパレルでも利用されるようになっており、渋谷に事務所を構える(株)ステイト・オブ・マインドの「nutte(ヌッテ)」などが縫製のクラウドソーシングサイトを立ち上げています。

このような業務の流れの変化が、実店舗を持たずにネットのみで商品を販売するD2Cという業態でのアパレル業界参入を容易にしています。個性的なデザインを強みとする事業者は、インスタグラムなどのSNSを利用することで大きな広告宣伝費を投じることなくブランドの認知を広められる一方、クラウドソーシングによって縫製を依頼し、特定の工場との契約を行うことなく自分のデザインを形にすることができるのです。

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2016年版小規模企業白書によると、フリーランスが仕事を受注する方法として「クラウドソーシング」を挙げたのはまだ7.8%にとどまっており、「知人、同業者からの紹介(55.1%)」「自らの営業(50.7%)」と言う回答の方が多くなっています。しかし、今後クラウドソーシングが広がれば、母のように洋裁の心得がある人間が多く参入し、日本発の個性的なブランドがたくさん出てくる日が来るかもしれません。

日本経済新聞 8月27日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34515500T20C18A8FFR000/