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スカイツリーのふもとにはパチンコ屋が一軒あります。といってもおそらく利用しているのは地域の住民で、スカイツリーやソラマチに訪れた観光客が利用している姿はあまり見かけません。しかし先日成立したIR整備法では、カジノを含む総合観光施設、いわゆるMICEによって観光客を呼び込み地域全体の活性化を図ることを目的としています。

とくに大阪府では2025年の万博誘致に合わせて、このMICE施設を誘致することに積極的です。
しかし万博に先駆けて開業するためには、早々に施行事業者を選定し国の審査を受けるなどしなければならずスケジュールとしては厳しい状況にあるようです。

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IR整備法の特徴としてカジノの施行を民間事業者に実施させることにあります。これまで日本で行われていた競馬や競輪、競艇などのギャンブルはすべて地方自治体や国が出資する特殊法人によって実施されていました。宝くじも発売元は地方自治体で、事務を銀行に委託している形です。

パチンコに関しては、直接勝敗結果を換金することは「賭博行為」として刑法で禁止されており、景品交換所を通して換金するという「三店方式」が取られています。

ところが、今回の法成立によって民間事業者が「賭博」を合法的にできることになると、パチンコのような他のギャンブルとの差異は何なのか、ということが問題になってきます。

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賭博行為には、ギャンブル依存症の蔓延、反社会勢力の関与、マネーロンダリングなどのリスクが本質的にあります。そのため「公共の福祉」を維持するために規制が必要であると考えられます。

しかし日本国憲法では第22条1項により「営業の自由」が保障されているとされ、このような警察的規制をかける場合には、必要・合理的な措置であって他の緩やかなやり方では効果がないとされる場合に合憲となるとされています。

IR整備法では、国際会議場やホテル等と一体的に運営されることや、国による免許制が取られることなど厳しい規制がかかっているとは言えますが、民間でも賭博行為を行えるとした以上、パチンコ等においても同じような規制があれば、換金行為が可能になるのではという議論が起きてもおかしくはありません。

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私はギャンブルには興味がない、というか勝負運が悪いのが分かっているのでなかなか理解できないのではありますが、カジノやパチンコを楽しみの一つの文化として受け入れるのであれば、依存症や反社会勢力の参入を確実に排除する仕組みと住民の理解が必要なのは間違いありません。

日本国憲法
第22条1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

日本経済新聞 7月21日(土)付 より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33244160Q8A720C1LKA000/