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東京スカイツリーは夜になるとライトアップがされ、毎晩色とりどりに彩られたツリーを眺めるのは楽しいものです。一方でスカイツリーの立っている押上近辺はもともと下町情緒あふれる土地柄で、結構古いビルも多く存在します。そのギャップがまた面白くもあります。

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東京都は2007年東京都景観計画を策定し、美しく風格のある東京を再生すべく良好な景観形成の取り組みを進めています。その一環として、2018年4月より試験的に大型ビルや高層マンションを新たに建設する業者に対し、周辺の道路や公共施設と一体感のある光の空間を整備すること、敷地内に歴史的な遺構などがある場合はそれらを効果的に演出する照明を行うことなどを求める事前協議を義務付けることとなりました。

都の景観計画は、2005年6月に全面施行された景観法を踏まえ制定されたものです。それまで各々の自治体が条例で歴史的な景観を守ろうとしていたものの実効性に乏しく、そのため規制をかけて厳しく取り締まる根拠として生まれたのが景観法です。

自治体の条例が実効性に乏しかったのは、景観を守るということが憲法に定める財産権を制限する根拠として弱かったことにあります。その後、最高裁も古くからある街並みに建設計画されたマンションを巡って争われた「国立マンション事件」で初めて景観利益の法的保護に値すると判断し、景観を守る権利が確立されていきました。

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しかし、この「国立マンション事件」の最高裁判決では「都市の景観は、良好な風景として、人々の歴史的又は文化的環境を形作り、豊かな生活環境を構成する場合」に客観的価値を有するとし、歴史的もしくは文化的環境がすでにあることを要求しています。

今回のようにイルミネーションを義務化する場合は、その設置コストや維持コストを事業者やマンション住民などの利用者に負担させることで、財産権を制限させることになります。

こうした施策が受け入れられるかどうかは、都民自身が夜間の景観を豊かな生活環境を形成する財産であると自覚していることが前提になるのではないかと思います。

日本国憲法
第29条第一項 財産権は、これを侵してはならない。
   第二項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

日本経済新聞 4月30日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29996010Z20C18A4CR8000/