nazonosakana

Facebookを使っていると友人たちの投稿に加え、時々広告が混ざって表示されます。こうした広告は出稿時に趣味や年齢、居住地などによるターゲットを絞ったうえで表示され、効率的に効果を得られるような仕組みとなっています。

反面、こうした仕組みは思想や信条が近い内容の広告を表示し続けることができ、世論の操作が容易にできてしまうという批判もあります。2016年のアメリカ大統領選挙においては、ロシアの組織により社会の分断を招くような広告がFacebookに投稿され、選挙結果に影響を及ぼしたとされます。

こうしたことを受け、米国議会内ではテレビやラジオ並みの広告規制をオンライン広告にも適用するという議論がなされています。

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こうした規制は、表現の自由を侵害となる懸念を思い浮かべます。

日本においても2016年に、当時の総務大臣であった高市氏が放送法第4条を根拠に、政治的公平性を欠く放送が繰り返された放送局を停波にすると述べたことが波紋を呼びました。

しかし今年に入り安倍総理大臣がこの放送法第4条の撤廃に言及すると、今度は放送業界からフェイクニュースやヘイトスピーチの氾濫につながる懸念があるなどとして、一斉に反発が起こりました。

このような反応は、一見すると矛盾しているように見えます。
しかし、放送業界にはこの政治的公平性を追求してきたからこそ公共の福祉に則し、メディアとしての信頼を獲得してきたのだという自負があります。すなわち放送法第4条は放送業界の自律的な倫理規定である、と言う考え方が根底にあるのです。

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インターネットメディアは既存メディアのように文章量や時間の制約がなく、無限に情報量が増えるために、どうしても広告に対するチェックが回らなくなるという欠点があります。アメリカ大統領選で発生したネット広告による世論操作もこうした欠点を突き発生したものと考えられ、フェイスブック社のCEOも今回の規制法案を受け入れる方針を示しました。

ただ、フェイスブック社は同法案に即した自主規制案も示しており、表だって反対を表明しないことで過度な規制にならないようにする思惑もあるようです。

やはり、規制を喜んで受けることはメディアとしてのプライドが許さないのではないかと思います。

日本国憲法
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第21条第1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

日本経済新聞 4月8日(日)付朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29124400X00C18A4EA2000/