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商店街などを歩いていると、残念ながら志半ばでお店をたたむことになり、お知らせの張り紙が店頭に掲げられているのを見かけることがあります。これまで一緒に働いてきた仲間たちを解散させるという決断は苦渋の判断であったとしても店主がなさなければなりません。

安倍晋三首相は17日、与党各党に早期に衆議院の解散を行う意向を伝えました。これにより10月末に総選挙の投開票が行われる見込みです。これには、11月の政治日程を考慮したということのほかに、野党の党勢が整わないことから今が選挙で勝利する好機であるという思惑もあるようです。これには野党各党や与党内部からも「大義がない」という批判が上がってきています。

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日本国憲法においては、実は衆議院の解散権がどこにあるのかを明記した条文はありません。解散については「天皇の国事行為」として行われること(第7条3項)、「内閣不信任案が可決された場合」のみの記述があるだけです。

しかし、第7条3項が示す天皇の国事行為は、内閣の助言と承認を要することなどから、内閣、その中でも特に内閣総理大臣に実質的解散権があるとする説が有力となっており、69条の示す「内閣不信任案が可決された場合」以外でも解散が認められるというのが通説です。

ただし、いずれの説も解散が認められる根拠は「国民に信を問う」機能を期待することにあり、内閣と衆議院の意思が衝突した場合、政権担当者の政治的基本性格が改変された場合など、解散のための「大義」が必要であるという結論に達します。

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今後、解散の意義が内閣によって説明されることになると思われますが、仮にその「大義」があいまいなものであったとしても、手続き上総選挙は行われることになります。そのとき仮に「大義」がないからとて「国民の信」を示さないとすると、民主主義が機能しなくなる危うい状態に陥りかねないことも忘れてはなりません。

日本国憲法
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
  第3項 衆議院を解散すること。
第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

日本経済新聞 9月18日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO21236970Y7A910C1PE8000/