平成30年が終わろうとしています。今年は私にとっても厄年、とても災害の多い年だったように思います。とくに大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号と春先までずっと暮らしていた関西地方に大きな被害をもたらした天災が襲ったことは非常に心苦しい限りでした。
近くに住んでいればもっといろいろできたものの、ボランティアとして行けたのは地震の片付けにかつての居住地、高槻に行った1回だけでした。地震後1か月でまだ屋根にブルーシートがかけられた家も多くありましたが、普段の生活を取り戻しつつある姿を確かめられたことは私にとっても一つ安心でした。
かつてに比べて、災害ボランティアへは参加しやすくなっていると感じます。1995年に起きた阪神大震災の時には、学生で時間のある身分でありながらどうやって参加するか分からず何もできずにいました。それだけこの20数年のうちにボランティアを活かす仕組みが整ったといえます。
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災害対策基本法でも、その基本理念で「国、地方公共団体その他の公共機関の適切な役割分担及び相互連携する」とともに「住民一人一人が自ら行う防災活動及び自主防災組織その他地域における多様な主体が自発的に行う防災活動を促進すること」と定め(第二条の二)、ボランティア活動を含めた自助・共助の活動と連携することが求められるようになりました。
この法律の目的は、「国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護」(第一条)ことにあり、憲法が保障する生存権や財産権を守ることが目的であるといえます。
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一方でこの目的を達するために、災害時に法律で対応しきれない事態に備えるため、例外的に行政に強い権限を持たせ避難経路の確保やがれきの処理を迅速に行えるようにする、緊急事態条項を憲法にもたせるべきという考え方があります。この場合、国が中央集権的に地方公共団体やその他団体を指揮しながら災害への対応に当たることになります。
ただ、緊急事態条項はこれにより財産権やその他の人権を一部制限することからその取扱いは慎重にならざるを得ません。また、国が現場のすべての情報を把握し正確に指揮をとることができるのかという現実的な問題もあります。
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平成は、数多くの災害に見舞われた時代でもありましたが、その一方でボランティアという自主的な助け合いの力が芽生えた時代でもありました。次の時代にもこの力を活かし育てながら、今後やってくるであろう難しい課題にも立ち向かえる社会が育つことを願うばかりです。
日本国憲法
第13条 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第25条1項 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第29条1項 財産権はこれを侵してはならない。
日本経済新聞 2018年12月31日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39492820Y8A221C1947M00/