変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

2018年07月

003

最近飼い主のマナー違反が目立つのか、近所の公園の木に写真のような張り紙がくくりつけられていました。ペットは生活に癒しを与えてくれますが、相手は生き物、周りに迷惑をかけないように飼い主が配慮しなければならないのは当然のことです。

しかし、そんな心配もする必要がないのがペットロボットの先駆けであるソニーのアイボ(AIBO)。19日から予約販売が開始されたそうですが、ユニークなのがその料金体系。AIBO本体は198,000円ですが、その後も毎月2,980円が課金されます。新型AIBOにはWiFiを通じてネットに接続する機能があり、都度データをダウンロードして「成長」するための費用です。

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このように毎月定額の費用を徴収するビジネスモデルを「サブスクリプションモデル」と呼びます。クラウドを利用したソフトウェアなどで広がりましたが、最近ではカーシェアや洋服のレンタルなど実物を伴うものも増えてきています。

「サブスクリプションモデル」は企業にとって売上を安定させることができ、固定費をカバーすることで利益の確保が容易になるメリットがあります。しかし、モノを作って売ってナンボのメーカーにとってはなかなか参入しづらいビジネスモデルでもあります。

このAIBOの「サブスクリプションモデル」では、モノをインターネットに接続するいわゆるIoT技術によって都度バージョンアップがなされるという付加価値を付けることによって定額課金を理由づけることに成功した、貴重なメーカーによるサブスクリプションモデルと言えます。

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この月々2,980円という価格、犬を飼っている人に聞くと「エサ代」だと思えば安いものなのだそうで。もし、本物の犬を躾ける自信がない人にとっては、エサに加えて躾けまでしてくれるこのモデルはお得かもしれません。

日本経済新聞 7月19日(木)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33104350Y8A710C1TJ1000/ 

006

都内を縦断する荒川土手は絶好のサイクリングロードになっており、春先に墨田区から埼玉の県境・戸田近くまで自転車で行ったことがあります。しかし、行ったはいいが帰りが大変。強い向かい風に見舞われたこともあり、何度も自分の自転車を乗り捨てたい衝動に駆られました。

こんなときバイクシェアなら近くのバイクポートに自転車を返せば、あとは電車に乗って帰ることもできます。都内各区と共同で運用しているドコモ・バイクシェアが利用可能な区は9区まで広がり、利用回数も2年で倍増し、17年度は410万回にまで達したそうです。

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ところで、バイクシェアというと以前まで住んでいた高槻のレンタサイクル屋を思い出します。レンタサイクルと言ってもほとんどが定期利用で、夕方に自転車を借りて自宅に帰り、翌朝出勤時に自転車を返すというスタイルで、まさに「所有」より「利用」を重視する「シェアエコノミー」を先取りしていました。

調べると高槻のレンタサイクル屋の歴史は古く、1980年代からすでに駅前で営業がされていたようです。まだ「シェアエコノミー」などという言葉もない時代にどうしてここまで広がったのでしょうか。

これは私の推測ですが、高槻市の鉄道路線と密接な関係があるものと考えられます

高槻市は大阪と京都のちょうど中間に位置し、関西圏のベッドタウンとして約35万人の人口を擁しています。しかしながら、高槻市内で鉄道が利用できる駅はJR高槻駅、阪急高槻市駅がある市中心部とJR摂津富田駅、阪急富田駅がある富田地区の2地区のみ。東西に広がった市内の住宅街からこの2地区に通勤・通学のために自転車でやってくる人が集中します。

そのため駐輪場の利用料金が高く1か月2,500円くらいします。(比較のため大阪市が運営する駐輪場は2,000円/月くらいです。)そのため1か月1,500円(グリーン・フラッグの例)で借りられるレンタサイクルを利用した方がお得なのです。

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前述の都内のレンタサイクルの場合、千代田区が2014年から15年にかけて行った実証実験では定期利用会員は5%にも満たなく、ほとんどが1回利用だったようです。シェアエコノミーが今後普及するためには、直接的に「お得感」が感じられる状況が作り出されることも条件になるのではないでしょうか。

日本経済新聞 7月12日(木)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32878900R10C18A7L83000/ 

010

1週間ほど前に金沢に行ってきました。金沢は加賀百万石と言われ、昔から北陸経済の中心地です。実際、石川県のみならず隣県の富山県西部では金沢からのアクセスもよく、かつてから加賀藩の影響を強く受けたのだそうです。

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北陸をはじめ多くの地方では人口減少による人手不足に悩まされています。地方自治体においても同じことが言え、総務省は2040年ごろに職員数が今の半分になることを予測し、新たな自治体の形を検討し始めています。

そのうちの一つとして通勤や買い物などの生活圏として一体感のある「連携中枢都市圏」を定め、この圏域単位の行政を標準として権限や予算を増やすことを提言し、「第3の自治体」となる可能性を示唆しています。しかし、金沢のように県をまたぐような場合は調整が難しくなると考えられます。

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日本国憲法では「地方自治体」と近しい概念として「地方公共団体」という組織を定義して、地方自治の形を定めています。

「地方公共団体」であるためには、「事実上住民が継時的文化的に密接な共同生活を営み、共同隊意識をもっているという社会的基盤」「地方自治の基本的権能を付与された地域団体であること」という2つの要件があると過去の判例は示しています。また「地方公共団体」では、その長および議会の議員は住民から直接選挙で選ばれなければならないと定められています。

これらの事から、もし都道府県、市町村に続く「第3の地方公共団体」として「連携中枢都市圏」が設立されたならば、その長や議会は多くの都道府県、市町村からも干渉を受けることになるのではないかと思われます。

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人口減少は、もはや日本では避けられない問題となっています。「ケンミンショー」など都道府県の特色を紹介するテレビ番組なども流行っていますが、都道府県や市町村といった枠組み自体も見直さなければならないときが遠くない将来やってきそうです。

日本国憲法
第93条第1項 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
    第2項 地方公共団体の長、その議会の議員および法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

日本経済新聞 7月16日(月・祝)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32986490T10C18A7ML0000/ 

014

以前に瞼の下にできものができて目がひどく痛んだときに、眼科から目薬と目専用の軟膏をもらいました。これがよく効きまた同じ症状が出たときに使ってたりしました。しかし、今は東京にいる身。また同じ症状が出たとき、新しいのをネットで買えないかななどと思ってしまいます。

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結論から言うと、現在の日本の法律ではネットで処方薬を買うことはできません。大衆薬以外は薬剤師から対面で説明を受けなければ、購入すること出来ないという決まりになっているからです。

そんな常識を覆すべくネット経由で服薬指導を行う企業が愛知県にあります。製薬大手のアインホールディングスはiPadを通じて患者と会話して薬を自宅に配送してくれます。と、言っても法に反しているわけではなく特区としてこのようなサービスが許されています。

しかし、このサービスにも「近くに薬局がないこと」という制約がつけられており利用できる患者はかなり限られているのが実情のようです。

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このような規制がかけられる背景には、厚生労働省が「かかりつけ薬剤師・薬局」の仕組みを推進していることがあります。「かかりつけ薬剤師・薬局」とは、これまでのように医療機関近くの薬局で薬を処方してもらうのではなく、身近な「かかりつけ薬局」で薬を処方してもらうことで、副作用や効果の継続的な確認し、また過剰に服薬してしまうことを防止し、自分にあった服薬ができるようになるという考え方です。

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確かにそのような仕組みが整備されれば、適切な服薬ができるようになるかもしれません。しかし私のように病院嫌いで、薬もたまにしか飲まない人間にとっては、普段は別に薬剤師のアドバイスを受けずとも、ドラッグストアなど手軽なところで薬を購入しているのが実態ではないかと思われます。

一部医薬品のインターネット販売を禁じる旧薬事法が憲法違反だとして、ケンコー・コムが起こした裁判で、2017年に福岡地裁は「合憲」の判断をしており、この分野での規制緩和はなかなか進んでいません。

今後、人口減少により街が縮小し「かかりつけ薬局」すら見つけられないような事態が起こりうるのであれば、ネットを経由して薬を購入できる利便性を追求する方が合理的ではないかと思うのでしょうがいかがでしょうか。

日本国憲法
(職業選択の自由)
第22条 第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

日本経済新聞 7月11日(水)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32849190Q8A710C1TJ2000/ 

001

「逃げるは恥だが役に立つ」2年ほど前に流行ったドラマでは、家事代行業にやってきた若い女性と雇い主が偽装夫婦のようにふるまい、やがては本当の夫婦のようになってしまうという、ざっくりいえばそんなストーリーでした。そんな素敵なことがあるなら是非とも家事代行をお願いしたいところですが、先立つものがない私は毎週末に掃除洗濯を自分で行っています・・・

このドラマで家事代行業、いわゆる家政婦さんの需要は一気に伸びたようなのですが、人手不足の日本ではこの担い手を外国人に求めるべく、15年末より特区を設け永住権を持たない外国人の家事代行サービスを解禁しました。しかし、在留期間が3年と短く生活習慣や文化に慣れたころに帰国してしまうことなどから普及には至らず採用は約270人にとどまっています。

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政府の試算では日本の15~64歳の生産年齢人口は40年度には18年度比で1500万人減るとされ、在留期間を長くするなど外国人労働者の受け入れを広げていくことは避けて通れないと見られます。

ならば永住する外国人を増やせばよいのではと考えられますが、現行の制度では原則として10年以上の継続した在留が求められ、仮もしに冒頭のドラマのように「事実上の」婚姻生活があったとしても正式な配偶者でない限り認められる可能性は低いと考えられます。
(法務省・永住許可に関するガイドラインより)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan50.html

さらに永住者であってもひとたび海外へ出てしまうと、過去の判例から再入国の許可が下りない可能性があります。(森川キャサリーン事件・1992年最高裁判決)これは憲法第22条が保障する居住・移転の自由が外国人には認められないという判決でした。

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このように外国人の受け入れについてはまだまだ厳しい要件が残る日本ですが、人手不足が深刻化する中でそうも言っていられない日が来るのはそう遠くはないはず。そろそろ真剣に議論しなければならない時期なのではないかと思います。

日本国憲法
第22条第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する
   第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

日本経済新聞 7月1日(日)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32472630R00C18A7MM8000/ 

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