変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

2018年01月

003

コンビニ業界は人手不足でシニアや外国人の活用も目立ってきました。そんな中、海外では無人のコンビニエンスストアというものも出来始めています。

そして、このほど世界中の話題を集めたのがアメリカシアトルにできた「アマゾン・ゴー」という無人コンビニ。買い物客は事前にアプリへの登録を済ませ、店内で選んだ品物を鞄に入れてそのままお店を出れば、店内の130台ものカメラが鞄に入れたものを判別し、レジを通ることなく買い物が済むという画期的な店舗です。


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今のところアマゾンは、シアトル以外にアマゾン・ゴーを出店する意向はないと述べていますが、この仕組みを傘下の食料品マーケット「ホールフーズ・マーケット」に展開し業務効率化を図るのではという見方がなされています。

しかし、このアマゾン・ゴー、実は完全に無人なわけではなく棚への商品の補充とアルコール販売の年齢認証だけは人間が行っています。そう考えると普通のコンビニと同じくらいの人件費はかかっていることになり、業務効率化だけのためにアマゾン・ゴーを開店したという見方には少し疑問が残ります。

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では何が目的なのでしょうか。

私は、このカメラでの観察技術にこそアマゾンの狙いがあるものとみています。

大手のECサイトでは、これまでもMA(マーケティング・オートメーション)などの仕組みを使って、実店舗とネットの購買履歴をもとに次の買い物の提案を行って顧客を囲い込むことが行われています。

カメラの観察技術を高めることができれば、これをさらに店内での行動、たとえば「お酒の瓶を手に取ったけど銘柄を見て結局買わなかった」と言った細かいしぐさまで見て、メールで他のお酒を提案するといったことが行えるようになるのです。

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品物をただお店に並べただけでは売れない時代、お客さんを観察し真のニーズをつかむことがショップの成功の鍵を握っています。ここのところ売上の調子が良くないようならば、アクセスログや購買履歴をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。

日本経済新聞 1月24日(水)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26059460T20C18A1TJ2000/ 

001

一人暮らしをしている人間にとって、家具のネット通販は強い味方です。家具店に出向かなくても数多くの商品の中から自分の部屋にあったものを選べて、もちろん配送もしてくれます。数多くの商品を販売できるのは、繁華街に家具を展示する広いスペースを確保する必要がないからです。

一方、近年メルカリのように中古品を売買してシェアしあう文化が根付いており、家具においてもリユースの市場が広がる可能性が出てきています。「セカンドストリート」を運営するゲオがこのほど、家具の中古品を買取り同社の通販サイトでの販売を開始することになりました。これまでは衣料・服飾雑貨などを主に扱っていましたが、競争激化により品揃えを拡大するのが狙いです。

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環境省が平成27年に行った調査によれば、家具のリユース品の引き渡し割合は16%。61%は自宅に退蔵されており不用品と認識していても処分できない状況が窺えます。

ゲオは連携する運送会社が中古品を引き取り、在庫として確保する形をとります。しかし新品の家具を仕入れるのに比べ商品の種類はバラバラで、コンセプトに合わせた品揃えを整えることは難しいのではないかと思われます。

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メルカリのようなCtoCで家具の交換をするには配送の問題があり、すぐには実現しなさそうです。しかし、CtoCが実現すると価格を求める人は中古品市場に流れ、新品の市場では今後コンセプトを明確にしたところだけが生き残るものと思われます。

日本経済新聞 1月22日(月)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25959910R20C18A1TJC000/ 

017

私はそれほどおしゃれに気を遣う方でもなく、服もそんなに買っていないつもりだったのですが、気が付けばクローゼットはパンパンに膨れ上がっています。ほとんど着ていないコートなどオークションなどに出して誰かに引き取ってもらえたら一番なのですが・・・

不用品交換のCtoCサービスといえば、「メルカリ」が飛ぶ鳥落とす勢いで伸びています。私は未だ利用したことがないのですが、売買した代金を金額で受け取らずに次の買い物に利用できるのが特徴で、振り込みなど現金決済の手間を省けることに一つのメリットがあります。

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しかしこの仕組みがメルカリ上場の障害となったようです。金融庁はこれが資金決済法で定める「資金移動業者」にあたると判断しました。「資金移動業者」として業務を行うには届出を行った上で預かり金、現金として決済されなかった売買代金と同額の供託金を金融庁に納めなければなりません。

そこでメルカリは売買代金の預かり期間を短縮し、いったんポイントとして換算する仕組みにするなどして「前払い式支払手段発行者」として登録し、多額の供託金の納付からは逃れました。

なお「前払い式支払手段発行者」であっても、未使用残高が1,000万円を超えるとその1/2を供託しなけれならないというルールがあります。ECサイトなどでも、ポイントを発行した場合、条件によっては「前払い式支払手段発行者」とみなされることがあり注意が必要です。

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しかし昨今は、ビットコインなどの仮想通貨が普及したことにより「現金廃止論」が議論されるようになる等、ポイントなどネット上で完結する決済手段は今後ますます増えていきそうです。法的な規制に十分注意しながら有効に利用していきたいものです。

日本経済新聞 1月19日(金)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25855930Y8A110C1TI1000/

006

ここのところ、囲碁や将棋のプロ棋士とAIの対決が注目を集め、AIが身近な存在になっています。私の大学のころにも、AI将棋というソフトがありフロッピーに入れて自宅のパソコンで対戦していたのですが、どうもバグがあるらしく序盤は手強いものの終盤にこちらの形勢が優位になると訳の分からない手を打ち出してあっさり勝てたりしました。

その後、AIの進歩はめざましく、囲碁・将棋の世界のみならず顧客分析やマーケティングにも利用されるようになってきています。大手の通販サイトから送られてくるメールなどはAIによって配信されているといっても過言ではないかもしれません。

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グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど巨大なビッグデータやクラウドを抱える企業は近年、「AIの民主化」と称して、AIの技術を簡単に使えるサービスを開始し、幅広くAIを利用しようとするユーザを取り込もうとしています。

しかし、一方で特定の大手企業にデータが集まり過ぎることを不安視する声もあります。また、データの偏りにより人種差別などのトラブルを助長するといった例もみられます。確かに自分の行動や趣味嗜好に至るまですべての情報がグーグルやマイクロソフトに集まってしまうのは気味が悪い気もします。

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3社が提唱するような「AIの民主化」とは、AI技術の利用という「機会の平等」を提供しているものと言えます。ちょうど一匹のネズミを狙う2匹のネコにその距離などネズミを捕えるための同じ条件を提供するようなものです。

しかし、もしどちらかのネコしかネズミを捕えることが出来ないとすると一方のネコは空腹を満たすことができ、もう一方は空腹のまま新たな獲物を探さなければならないという憂き目を見なければなりません。すなわち「結果の平等」はなんら保障されていないということになります。

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近代までの社会では「機会の平等」だけが保障されていればよいという考え方が主流でしたが、資本主義の発達により格差が広がり、社会権という概念によってある程度「結果の平等」も保障されるべきと言う考え方に移行してきています。

情報という資源が特定の場所に集中して「結果の平等」が損なわれてしまう、と言うことに対しても考えなければならない時が来ているのかもしれません。

日本国憲法
第14条1項 すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第25条1項 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

日本経済新聞 2018年1月18日(木)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25801290X10C18A1TI1000/ 

007

私の住む京阪神地区でも少し路地に入れば、明らかに空き家とわかるような家を見かけることがあります。それが小さなお店や宿泊施設をつくればそれなりにやっていけそうな場所だったりします。人口減少が発生している地域では、土地の価格下落によりこうした空き家が増加しているのが実態です。

こうしたことを踏まえ、国は2014年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を公布し、市区町村に対して空き家の実態を把握し、その活用方法を検討したり、特に危険な空き家に対しては適切な措置をとるように求めています。

しかしながら、日本経済新聞社が全国814の市区の首長に対しアンケート調査を行ったところ、「空き家を把握」していると回答したのは30%にとどまりました。

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空き家の把握を困難にしているのは、相続が適切に行われずに所有者が不明になっている物件です。所有者が死亡しているのにも関わらず相続登記がなされていないと、考えられる法定相続人の数が増え調査を困難にしてしまうためです。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」は「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的」として制定されたものです。すなわち憲法29条2項が定める「公共の福祉に基づく財産権の制限」を根拠としているととらえられます。

しかし、その財産権の権利者すらわからない状況では買収などの適切な措置が取れないことになります。同アンケートの回答でも不動産登記制度の見直しや国レベルのルール化を求める声が多く挙がっています。

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相続人としては、経済的な面で空き家の維持・管理が行えない等の理由から登記を行わないというケースが多いようです。しかし、民法上は明確に相続放棄の意思を示さない限り登記がされるかどうかにかかわらず相続が行われます。

自治体による買収などにより空き家の有効活用が行われる可能性があることを考えると、登記を行うか相続放棄を行うかのどちらかを選択するのが賢明ではないかと思われます。

日本国憲法
第29条 第1項 
財産権は、これを侵してはならない。
     第2項 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

日本経済新聞 2018年1月8日(月)朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO25381710V00C18A1ML0000/ 

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