変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

2017年08月

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先日、何年かぶりにプロ野球の試合を見に行ったのですが、私の応援するヤクルトスワローズは断トツの最下位に低迷。この日も精彩を欠きいいところなく試合が終わりました。たった2年前に優勝したチームとは思えません。とくにプロスポーツの世界というのは選手の怪我やモチベーションによって成績が大きく変わり人材管理の重要性が求められる世界と言えそうです。

一般の企業においては人事部が人材管理を担うわけですが、彼らの仕事も楽ではないようです。採用面接をするのに毎回会議室を予約しなければならない、採用サイトの情報を社内の採用管理システムに打ちかえなければならないなど雑用に追われるのが現実。人材サービス各社はこうした雑務を軽減すべく「HRテック(ヒューマンリソーステクノロジーの略)」という新技術を提供し、人事・労務の効率化サービスを開始しています。

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そもそも人事部はなぜそんなに忙しいのでしょうか。
この問いに対し、ドラッカーは「典型的な人事労務部門の諸活動には一貫性がない」と批判し、「一般的に人材管理とは、労働者とその仕事の管理を意味する」としながらその実態として「安全衛生、年金制度、提案制度、雇用業務、苦情処理など企業にとって付随的な雑用ばかりである」と指摘しています。

これに加え現在では、人手不足による採用コストの増大、働き方改革の進展による労務体系の多様化などが重なり、人事部の業務が多忙になっているものとみられます。

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しかしこれまでの人材管理は、単に労働力としての人の管理と言う面から発展した経緯があり、これからの企業は、従業員の人間としての成長やそれに伴う個々の能力の発揮を最大化することにより発展していくということを考えると、「HRテック」を有効活用して、人事部の「働き方改革」を実施することが先決なのかもしれません。

日本経済新聞 8月24日(木)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ10IEJ_T20C17A8TJ1000/ 

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私は、地方のゲストハウスに泊まりに行くのが好きでよく旅に出ます。そこにはいつもいろいろな人との出会いがあり、自分の人生観に広がりを与えてくれます。しかしさらに上手で、泊まるだけではなく都会から移住してきたというという方にも時々会うことがあります。たしかにこれだけ心の豊かさが得られるのなら移住してもいいかなと、時々思います。

一般財団法人「持続可能な地域社会総合研究所」が国勢調査を分析したところ、過疎市町村の11.7%にあたる93市町村で、転入者が転出者を上回る「実質社会増」の状態にあることが分かりました。自治体の移住促進策により都市からの移住が増えたことが原因です。

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日本国憲法第22条1項は、国民の居住移動の自由を規定しています。歴史的には、人の自由な移動を確保して、都市部の自由な労働者を確保することが近代資本主義社会の土台を築くことになったと考えられています。

しかし、憲法が居住移動の自由を定めたことにより東京圏などの都市部への人口集中が起きたのかといえば、そうとも言えません。徳川政権が江戸に幕府を開いて以来、町人が集まり、また参勤交代によっても武家屋敷ができ、すでにこのころに江戸の人口は100万人を超えていたとも言われています。

また、享保年間から幕末にかけては、都市に移り住んだ町人が家族を呼び寄せるなどして女性の割合も増えたようです。しかし、当時は「入り鉄砲出女」と言われ、女性が江戸から出ることは許されませんでした。

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憲法が保障する「居住移動の自由」はもちろん、都市から地方への移動についても保障しています。職を求めて都市へ移動する「経済的自由権」の側面のほかに、自分の活動範囲を広げ、新しい人的接触の場を得る機会を得るという意味で「精神的自由権」の側面もあるといわれてます。

過疎地域の一部で「社会増」がみられるという現象は、人々が「経済的自由」よりも「精神的自由」さを重視し始めたという証拠なのかもしれません。

日本国憲法
第22条1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

日本経済新聞 8月22日(火)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21HDN_R20C17A8CR8000/ 

001

私の今通っているオフィスの1階にはコンビニエンスストアが常駐しており、文具を買ったり、コーヒーやお菓子を買うのにも重宝しています。大学で言ったら生協みたいなものでしょうか。働く場所や学ぶ場所にこうした購買施設があるのは便利なものです。

アメリカのアマゾンはこのような需要に目をつけ、大学構内とその近郊で注文した菓子などを2分以内に所定の受け取りロッカーに届けるサービスを始めると発表しました。常駐したアマゾンのスタッフが注文の品をロッカーに搬入する仕組みです。これにより自販機などの物販業態が影響を受けるとみられています。

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アマゾンの販売形態は、他のものと比較してどのような優位性が考えられるでしょうか。

まず、コンビニエンスストアに対してですが、客が購買施設に直接来店するわけではないため、接客の必要がなくなり万引きなどによる欠損も防げます。また、品出しの必要もなくなることから常駐スタッフのタスク軽減により人件費は低く抑えられそうです。

自販機に対してですが、品揃えの面で圧倒的に優位で、もしコンビニ並みとまでは言わずともそれなりの品ぞろえをすべて自販機で販売しようとすれば相当の設備投資やその維持費用が掛かり現実的ではありません。

アマゾンの戦略はこの2者の良いとこどりをしているともいえます。

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しかし、アマゾンが販売品目として考えている菓子に限って言えば、日本のオフィスには欲しい菓子の分だけお金を箱に入れ自分で菓子を持っていく「置き菓子」というしくみが広がりつつあります。この方式であれば常駐の人件費は不要だし、スペースがあって社員のモラルさえ高ければ実現できそうです。

そう考えると「置き菓子」は、アマゾンをも凌駕する日本発の新ビジネスとなれるのかもしれません。

日本経済新聞 8月17日(木)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO20058240W7A810C1TI1000/ 

001

ここの所、関西は訪日客や修学旅行の需要でタクシー業界も盛況のようです。そのおかげか最近はサービスも向上し、運転も穏やかになった気がします。いままでで一番恐ろしかったのは12年前に上海で乗ったタクシー、一般道でも100km/h超えで疾走し、ジェットコースターばりのスリルを味わった記憶があります。

中国の配車アプリ最大手、滴滴は7月下旬に運転者の速度超過や急ブレーキなどを検出し注意を与えるアプリを導入。安全評価の高い運転手に優先的に配車することで利用者の利便性を高めています。

この滴滴という会社、中国ネット通販最大手アリババ集団のグループ企業で最年少の地域マネージャーだった程維CEO、米投資銀行ゴールドマン・サックスから転身した柳青総裁の2人の辣腕と強いリーダーシップにより、創業よりわずか5年で1日の配車件数2000万件の巨大企業にまで成長させました。

最近では国とも提携し、アプリで得た運転データによって渋滞緩和の仕組みを構築し、将来は自動運転を世界でけん引する企業になることを目論んでいます。

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2人が強いリーダーシップを発揮して会社を急成長をさせることができたのには、配車アプリ事業は大きな先行投資が必要なく参入障壁が低い、利用者を先に多く抑えられるほど先行者利益を得られる、そして中国の巨大な市場という3つの要因が考えられます。

ひとたびそのサービスが受け入れられ、中国中のユーザが利用するようになると巨額の利益が会社に入ってきます。こうして2人の成果が社内でも揺るぎないものとなり、強いリーダーシップをさらに強固なものにすることができます。

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インターネットの世界で新たなサービスを開始して、急激に巨大企業にまで成長した例は枚挙にいとまがありませんが、必要条件として巨大な市場に一気に浸透させることが求められるようです。腕に覚えがあるならば、世界に目を向けることが大成功への道のようです。

日本経済新聞 8月16日(水)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ07IHP_Q7A810C1TJ2000/ 

016

今日、8月15日は日本においては終戦記念日。日本各地には先の第二次世界大戦の戦争遺構が至る所にあり、この日が近づくにつれ二度と戦争を繰り返さないことを誓うための式典が実施され、テレビ番組等でも取り上げられます。

しかし、世界を見渡せば戦争は決してなくなっておらず、ここ最近では日本周辺でも北朝鮮のミサイル発射を巡り緊迫した状況が続いています。韓国の文在寅大統領は、14日米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部長と会談。ダンフォード氏は、「外交・経済で圧力をかける米政府を支援するのが米軍の優先目標」としつつも、「こうした努力が失敗したときに備えて軍事的選択肢を準備する」と述べ、戦争による問題解決の可能性を否定しませんでした。

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日本国憲法が掲げるような平和主義においては、こうした場面において軍事的選択肢を取り得ず、時に現実的な解決策を示せないという批判を浴びることになります。

平和主義は現実的か?という問いに対して、松元雅和・島根大学准教授は著書「平和主義とは何か(中公新書)」の中で、平和主義・非平和主義双方の立場から政治哲学を踏まえて対話を図ろうと試みています。

非平和主義の立場からは、①世界は中央政府がない無政府状態であり国家は生き残りをかけた安全保障こそが最大の目的となる②そのため無益な争いに巻き込まれない唯一の手段は自ら反撃の力を備えることである。という主張がなされます。これは今日の国際社会においては支配的な考え方となっています。

これに対し、①「安全保障が最大の目的となる」のは仮定であって「べき論」ではない②一国が力を持てば他国は脅威を感じさらに力を蓄えるという副作用がある、市民が結束して侵略者に従わないよう非暴力の行動をとる「市民的防衛」という手段もあるという点において平和主義の立場で反論を試みます。

しかし、「市民的防衛」も市民の社会的結束があること、侵略国にも戦争規則遵守の姿勢があることなどの条件が必要であり、実施するにもかなりの覚悟がいることを指摘しています。

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著者の松元氏は、持論として非平和主義は「対症療法」で効果が見えやすいのに対し、平和主義はすぐには効果が出ないものの原因の根本に迫る「原因療法」であると位置づけています。

確かに我々は、差し迫る危機や世界の非人道主義に目を背けて理想ばかりを主張するわけにはいきません。より現実的な手段を取らざるを得ない事の方が多いと考えられます。

一方で、悲惨な戦争を経験し終戦を迎えた多くの日本人は、平和主義こそ戦争を回避する唯一の方法と考え新憲法を受け入れたものと考えられます。その意思を受け継ぎつつ、現実とのはざまで葛藤をしながら「原因療法」の処置を実現する努力をし続けることが我々に課された責務であると感じます。

日本国憲法
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の校正権は、これを認めない。

平和主義とは何か~政治哲学で考える戦争と平和
松元雅和[著] 中公新書

日本経済新聞 8月15日(火)付 朝刊より 
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC14H31_U7A810C1EA1000/ 

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