私は商店街を歩くのが好きで、旅行に行っても観光地に行くより商店街を見て回る方がテンションが上がってしまいます。しかし、地方都市の商店街というのはご周知のとおり「シャッター通り商店街」などと揶揄されて厳しい状況におかれており、結果、高齢者などの買い物弱者を生み出すという問題もはらんでいます。
この本の筆者である新雅史氏は、父親が商店街の商店主だったこともあり、こうした問題に対する意識から、商店街のなりたちから衰退した経緯に至るまでを、その形成理由と政府の保護政策という観点から考察しています。
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本書によれば、日本に点在する商店街のほとんどは「伝統的なもの」でもなんでもなく、第一次大戦・第二次大戦後に発生した農村から都市部への労働人口の流入の受け皿のために「発明」されたものであり、大きな資本も持たずに商いを始めた彼らが都市部で大量に失業しないために、大規模小売店から保護することにより成り立ってきたものであると指摘しています。
しかしながら、高度経済成長を経てオイルショックを迎えると、そこからいち早く立ち直った日本型企業に勤める労働者こそが日本経済を支える主役となり、結果、保護政策を解除する規制緩和が進み自営業者層は衰退を加速させることになります。
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筆者はこうした商店街の衰退により、前述のような買い物弱者の発生や、コミュニティの崩壊といった弊害を指摘し、地域を支えるための規制が必要であると提案をして本書を締めくくっています。
私もこれ以上商店街が衰退してしまうのは、地域の賑わいや雇用創出の面で問題があると感じています。ただ、小規模小売店の保護という規制だけに頼るのは限界があるのではないかと思います。と、いうのはこれまでのこうした保護政策は、都市部に流れ込む労働人口の抑制という文脈で進められてきたものであり、労働人口が減少してきた現在はその必要性も薄れてきています。また、長期的には需要が減少することから保護するだけでは先行きは見通せないと考えられます。
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最近、商店街の中に、若者たちが集まって自由に新しいビジネスができるインキュベーション施設のような店舗がみられるようになりました。こうした取り組みにより新ビジネスの立ち上げ期の支援を行うことが今後の商店街活性化のためには必要なのかもしれません。
もしもその中から国際的にも競争力のあるような企業が生まれてくれば、その地域が飛躍的に明るくなるのではないかと夢を見てしまいます。
商店街はなぜ滅びるのか~社会・政治・経済史から探る再生の道
新雅史[著] 光文社新書