ガンダム、タイムボカン、サイボーグ007。昔見たアニメではロボットや人工知能、コンピュータ技術などが戦いの場面で大きく活躍していました。しかし、それはあくまでSFの世界。どこか現実とは遠いものであると感じることができたからこそエンターテインメントとして楽しめたのだと思います。しかし、こうした先端技術の開発を行っている日本の大学の研究を現実に軍事にも活用させようという動きが出てきているようです。
日本の科学者の代表機関である日本学術会議は、26日に軍事目的の科学研究について検討する会議を設けたと発表。軍事と民生の両分野で応用できるデュアルユース(両用)の技術の扱いなどを議論するそうです。防衛省が昨年から基礎研究に資金を配分する「安全保障技術研究推進制度」では採択された9件のうち4件は大学が担い、大学による軍事研究は事実上既にスタートを切っています。
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防衛省が大学までを含めた民間の技術開発を頼りにする背景には、技術革新のスピードが増していることがあるようです。防衛省の担当者は「ドローンのように意外なところから新技術が登場する」と述べ、軍事専門の研究機関だけでは限界があることを示唆しています。
イノベーションには性能の向上を目指す「持続的イノベーション」と、まったく新しい特性を持った製品や仕組みを生み出す「破壊的イノベーション」の2種類があるといわれています。そして一度イノベーションを成功した組織は「破壊的イノベーション」を起こしにくくなる「イノベーションのジレンマ」に陥りやすいとされます。
技術革新のスピードが速い今日、「破壊的イノベーション」をいち早くとらえるには民生利用が主目的のものの軍事転用、またはその逆のことを利用することが必要と考えたのだと思われます。
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都内で会見した日本学術会議の大西会長は「(かつて戦争目的の科学研究に関与しないとの旨の)声明を出した当時と比べて社会状況が大きく変化した」と今回の議論開始の意義を説明しています。
一方、奇しくも今日、広島で演説をしたオバマ大統領は「恐怖の理論から我々は自由にならなければならない」「科学を、生活をよりよくするものに使ってほしい」と述べ、科学技術の暴走によって生まれた核兵器の廃絶を強く世界に訴えました。
現代に生きる全ての人間は「人類の英知である科学をどのように使うのか」という問いに、正しく答えられるか試されているといえます。
日本経済新聞 5月27日(金)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H5I_W6A520C1EE8000/