変わりゆく世に面白く

中小企業診断士。ウエスト・アイ・ランドコンサルティング代表。会社員としてネットショップ支援業務に19年間従事の後山口県萩市へ移住。 地域おこし協力隊として従事しつつ独立。スモールビジネスとは何かを自ら実践しながら追求する。

2016年04月

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かつて街中でメーカーラベルを伏せたコーラを飲み比べて「おいしいのはどっち」と聞くと、必ずそれが「ペプシコーラ」になっているというCMがありました。これはもちろんコカ・コーラを意識したもの。この2つのコーラ合戦のみならず、ペプシコーラを販売するサントリーとコカ・コーラのデッドヒートは今も続いているようです。

そんな競争が激化する中、コカ・コーラブランドの飲料の製造・販売を手掛けるコカ・コーラウエストとコカ・コーライーストジャパンが経営統合へ向け協議を始めると発表したそうです。もともと日本のコカ・コーラ販売網はきめ細かく全国展開を進めるために地域ごとにボトラーを設立していましたが、その後設備や人員の重複を解消するために統合を進めてきました。今回の統合が実現すればその総仕上げとなることになります。

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グローバル企業であるコカ・コーラは、東西グループ合わせて25%強で現在トップシェアを走ります。リーダー企業の戦略をとり続けるためには市場シェアの維持が必要となります。そのため統合を繰り返し規模とコスト優位性を保とうとします。

対してチャレンジャー企業であるサントリーは、黒烏龍茶などの高品質高価格製品の取り扱い、宇宙人ジョーンズなど印象的で積極的な広告宣伝、そして強固流通網の構築などで対抗しています。とくに流通網に関しては、自販機での販売比率の高いコカコーラは消費増税により販売機での定価販売が嫌われているのに対して、酒類やサプリメントの販売で店舗での販売網を持つサントリーが猛追をかけている構図のようです。

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国内の清涼飲料市場は人口の減少に伴い成熟してきており、コカ・コーラとサントリーの2社以外のアサヒ・伊藤園・キリンなども再編が進むのではないかと記事は指摘しています。
売られている清涼飲料はぶっちゃけ中身にさほど差はないとも言えそうですが、やはり選択肢が減ってしまうのはさみしいもの。これからも個性を発揮して競争をつづけてほしいものです。

日本経済新聞 4月27日(水)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00136150W6A420C1TI1000/ 

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山陽本線に乗って尾道近くまで来ると、瀬戸内海にクレーンが隣接する造船所が数多く見えてきます。2010年~11年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「てっぱん」はこの尾道が舞台。遠藤憲一演じるヒロインの父親が取引先の進水式で、娘の旅立ちと船の進水を重ね合わせて号泣するという場面があったのを思い出します。造船というものはそれほど苦労の多いものなのでしょう。

三菱重工がその造船で苦しんでいるようです。大型客船の相次ぐ納期遅れにより2016年3月期に508億円の特別損失を計上。大型客船の特損はこれが初めてではなく累計で2375億円に達したとのこと。設計段階で設計図が顧客の了承を得られず2年の遅延。納入前にエンジンの騒音を指摘され対応に追われ、さらには1月に3回発生した火災の影響で損失が膨らんだそうです。

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三菱重工のホームページによると造船は①設計・開発②材料購入・切断③曲げと溶接④ブロックを作る⑤船台での組立⑥進水⑦船内の仕上げ⑧試運転・完成、という工程を踏むそうです。船が大きくなればなるほど部品の大きさも数も増大し、ひとたび手戻りが発生すれば致命的な工程遅れにつながることが想像できます。

そのため、綿密なスケジューリングが必要になるわけですが、「一から大型船を作るのは初めてだったのに従来の客船の延長線上でやってしまった。」と宮永社長は記者会見で反省の弁を述べており、計画自体にどこか甘さがあったのではないかと思われます。

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このほかMRJの納期遅れや、アメリカ原発事故での損害賠償、さらに今日失注が決まったオーストラリアの潜水艦製造と三菱重工には多くの試練が降りかかっています。さらに追い打ちをかけるようなグループの三菱自動車の不祥事。日本を代表する重厚長大産業の歯車がどこか狂い初めているように思えてなりません。

日本経済新聞 4月26日(火)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO00086860V20C16A4TI1000 

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私が大学に通っていたころは、大学の研究成果をもとにしたベンチャー企業を見かけるのはまれでした。(少なくとも私の通っていた大学では。いや、知らなかっただけかもしれませんが・・・・)最近では都市圏の有名大学だけではなく地方の大学でもVBが立ち上がり、その資金提供に地方銀行が一役買っているそうです。

たとえば島根大学の研究成果を生かした海藻を肥料にするビジネス。むかしからコメや梨に海藻を原料にした肥料を与えると味が良くなることが知られていましたが、取り出す効率が悪く肥料化できるのはわずかだったそうです。このビジネスに山陰合同銀行が中心となった「しまね大学発・産学連携ファンド」が9000万円を投資し、5年後には売上高3億円を目指すとのことです。

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地方銀行がこうしたベンチャービジネスに出資する背景には、マイナス金利で新たな投資先を開拓する必要性に迫られていることがあるようです。

先の9,000万円が出資された島根大学の例でいえば、仮にマイナス金利から少しだけ上乗せした期待収益率1%だった場合、目標の5年後までに出資額を回収するためには、5年間の年金現価係数が4.853であることから毎年9,000万円/4.853=約1,854万円のキャッシュフロー(≒利益)を生み出せばよいことになります。

しかしたとえばバブル期のような高金利のときで期待収益率10%だったと仮定すると5年間の年金原価係数が3.791であることから毎年9,000万円/3.791=約2,374万円のキャッシュフローが必要となり期待収益率1%の時よりも毎年500万円以上も余計に稼ぎ出す事業でなければ損をしてしまいます。

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低金利政策は、こうした名目上の利益のハードルを下げて投資を促す作用があります。本来なら安定的に利益を生み出す企業に投資すればリスクも少なくて済むのですが、山陰などでは企業数自体が減っておりVBなどへの出資でリスクを取る必要に迫られているようです。

自らの研究をビジネスにつなげたいのなら地方の大学へ行くのがチャンスかも!?

日本経済新聞 4月25日(月)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO00044160V20C16A4TJE000 

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今日の日経の一面記事は「電子部品 4年ぶり受注減」というもの。原因は1~3月のiPhoneの販売不振であるとのこと。逆に言うと、iPhoneというただ一つの製品の売れ行きが日本の電子部品の生産状況を左右してしまっているということで、それ以外の電機製品の重要度が下がっているという証拠とも言えそうです。

そんな厳しい環境の中、日立製作所社長兼CEOの東原敏昭氏は「高性能の製品を作って売るパターンから
今後は顧客の課題を一緒に考えて付加価値を生み出していく」方針を示し、さらに「営業利益率5%が出ない事業は撤退を考えろ」と指示を出し、高付加価値の製品に経営資源を集中し国際市場での競争力を高めていくことを宣言しています。

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東原氏はこのインタビューの中で、米国のGEやドイツのシーメンスを引き合いに出し、ときには中核事業以外を手放し戦略的に経営資源を集中させる重要性を述べ、日本の場合経営危機に陥って初めて構造改革に取り組む傾向があり、日立製作所自信も2008年度に計上した最終赤字がきっかけで再編がようやく始まったことを反省しています。

経営資源配分の最適化を考えるフレームワークとしてよくPPM(Product Portfolio Management)が引き合いに出されますが、この考え方においても「新分野への展開のむずかしさ」が欠点として指摘されており、単純な資源配分の仕方だけでは、iPhoneのような多くの消費者の目を引き国際競争力を持つ事業を生み出すことは難しい時代になっているといえます。

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東原氏は、「世界と戦うには10%以上の利益率が必要」と高い目標を掲げていますが、実現できるかどうかは研究開発によって世界の消費者の心をつかむ画期的な製品が生み出せるかにかかっているのではないかと思います。

日本経済新聞 4月24日(日)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO00030330T20C16A4TJC000 

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日本人のソウルフード、お好み焼きやラーメンといったものは手頃な値段で気軽に食べられるのが魅力です。ところが、日本食がユネスコの無形文化遺産になったのをきっかけに、シンガポールなどの東南アジアで和食の人気が高まり、こうした我々が日常食べるようなメニューでも高い値段を払って食べてもらっているようです。

このたびパルコは、シンガポールの金融街に隣接した商業施設「100AM」にラーメン店やお好み焼き屋などの飲食店6~7店を集めたモールを展開するとのこと。ビジネスパーソンや近隣に住む家族連れをターゲットに、例えばラーメン一杯1,500円以上で販売するそうです。

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パルコは1990年代後半にもシンガポールにに複合施設の形で出店。しかし、国内に経営資源を集中するなどの理由で一度は撤退していました。したがって、今回は再進出のような形となっています。日本国内での今後の急成長が見込めないことから海外事業の育成を急いでいるようです。

日本企業の国際化は一般的に輸出から始まり、その後現地生産などを経て海外事業部の設置と発展していくといわれています。
パルコの場合も、今回の出店を足掛かりにファッション関連の店を揃えた商業施設の展開も検討されているとのことで、日本食の世界遺産登録の好機をとらえ日本食を「輸出」することから海外再進出を図ろうとしている格好です。

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これまでの歴史の中で輸出によって発展を遂げてきた日本経済。日本食も輸出、そして海外事業の柱となればその生産者である国内農業の競争力アップにもつながるのかもしれません。

日本経済新聞 4月23日(土)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00003550S6A420C1TI5000/ 

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