日本の大企業は、組織内のすり合わせがうまく組織間で連携を取りながら発展を進めてきた反面、既存路線からの転換を難しくしイノベーションを阻害してきたという指摘があります。そうした弊害を取り払うためには、蓄積した知識や技術を「活用」するのと並行して、従来の領域とは異なる知識や技術を探る「探索」の2つを追う「二刀流の原理」を活用すべきであると筆者の柴田友厚・東北大学教授は述べています。
とくに大企業において「探索」の活動を効果的に促進している例として、3Mの「15%ルール」(勤務時間の15%を正規業務以外の事に費やせる制度)や、小林製薬の「社員提案制度」を挙げそのうえで、これらの制度を十分に機能させるためには「汝、アイデアを殺すなかれ」(3M)、「全員参加による創造と革新」(小林製薬)と言った組織文化が欠かせないと結論づけています。
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組織文化とは、組織のメンバーに共有された価値観や信念、行動規範などであり、これらが組織メンバー間で共有されることにより意思決定のすり合わせを容易に行い、コミュニケーションを円滑に行うことができます。組織文化がもたらす効能を享受するためには、組織の構成員に組織文化を規範や基準を明確にする必要があります。(これが、上記の例でいえば「汝、アイデアを殺すなかれ」、「全員参加による創造と革新」といった行動規範にあたると考えられます。)
さらにそれを浸透させる施策として、「QC活動などの小集団活動の実施」、「儀式やセレモニーの実施」、「奨励すべき行動のエピソードなどの伝承」などが有効とされます。「15%ルール」や「社員提案制度」なども「探索」活動の考え方を浸透させるための施策と言えるでしょう。
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風通しの良い組織は、いろいろなアイデアが自然に生まれてくるもの。そのためには組織全体で文化を築き上げていくことが大切と言うことのようです。
日本経済新聞 2月29日(月)付 朝刊より
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO97798100X20C16A2KE8000