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「上を向~いて歩こ~う♪」とは、坂本九さんの名曲。大阪の街を歩いて上を見上げても高層ビルや高速道路が視界に覆いかぶさってくるものの空を見上げることはでき、少し心が洗われる気がします。この名曲の作詞は永六輔さん。私も一時期よくラジオで声を聞いていましたが、残念ながら昨年の夏に83歳で亡くなられました。

そのお孫さんにあたる永拓実さんは、生前の六輔氏を「ふつうのお爺ちゃん」として見ていましたが、死後「お別れ会」にはたくさんの著名人が弔問に訪れ、またかつてのリスナーからは「ラジオの声で自殺を思いとどまった」と言う声まで聞かれ大いに戸惑ったそうです。それを機に人の命を救うほどの六輔氏の内心に迫るべく、書斎に入り半年をかけて100冊近くの著書や手帳、ノートを読み漁り、一つの作品にまとめようとしています。

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日本国憲法19条は、思想・良心の自由を謳い、内心の自由を保障しています。実は世界的には思想・良心の自由は絶対的なものとされ、条文として存在することは珍しいといわれています。日本国憲法がこの規定を明記しているのには、明治憲法下で特定の思想を反国家的なものとして弾圧してきた歴史があったためです。

明治憲法下においてはどのような思想を持っているか問いただされ弾圧されていたという経緯がありました。この反省から日本国憲法下においては、内心の思想にとどまっていればどのような考え方をしても絶対的な自由が保障されています。また、思想を訊ねることも許されていません。

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冒頭の「上を向いて歩こう」の歌詞ですが、拓実さんが調べたところによると安保闘争に敗れた若者のために作られたものなのだそうです。もし、思想・良心の保障がこの国になく、この歌が発禁処分になっていたならば、世界中で愛される名曲になることはなかったことでしょう。

日本国憲法
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

日本経済新聞 8月27日(日)付 朝刊より
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG22H7M_S7A820C1SHB000/