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5月も半ばを過ぎ、日差しが強くなってきました。日中などは外を出歩くと汗ばんできて、日陰でひとやすみしたくなります。こうしたときに大きな木や建物があるとホッとするものです。しかし、一年中日陰の場所というのは逆に息苦しくて生活がしにくいのではないかと思います。

名古屋では、堅調な需要を背景に高層マンションの建設が盛んになっており、「日照権」をめぐり周辺の住民とのトラブルも多く起きているようです。マンションの高さは、建築基準法や都市計画法で決められており、とくに高層マンションが建設できない都市計画法上の「低層住居専用地域」などが隣接するような場所では、隣接域内にまで日陰が出来てしまいトラブルが起きやすいようです。

では、「日照権」を理由に都市計画法による地域区分が不適格であることを訴えることは出来るのでしょうか。

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「日照権」は、社会の近代化によってもたらされた新しい人権の一つと考えられ、「環境権」の一部であるといえます。日本国憲法においては「環境権」について明文化された条文はなく、13条(幸福追求権)、25条(生存権)によって根拠づけられるというのが通説となっています。

25条(生存権)のような社会権と呼ばれる権利の場合は、「国家による自由」によって保障されると考えられており、国家による国民への積極的な介入が求められます。

しかし今のところ「環境権」の概念、権利の主体などが不明確な点も多く積極的な行政な介入が行われることは期待できず、「日照権」に関しては民法の所有権や不法行為の概念を用いて争われるケースが多いのが実情のようです。

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「環境権」については、憲法で明文化して認めるべきと言う議論もあります。一方でこうした権利が認められることで、都市計画などに制約が生じ経済的な発展が妨げられるとも考えられます。今後、国民の幸福をどのように追及するかによってその答えは変わってきそうです。

朝日新聞 5月20日(土)付 より
http://www.asahi.com/articles/ASK584D4VK58OIPE012.html