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私も40歳を前にしながらいまだに独身でおりますが、私の兄も実はまだ独身です。なおかつ、兄は実家で両親と同居しています。兄は介護関係の仕事に就き、両親はすでにリタイアしているため収入は兄のみが得ている格好ですが、住居や食事は両親からの支出によるもので、経済的にはまだ親に頼っている部分があります。

かつて「パラサイトシングル」と言われたこうした生活形態は、親の資産が尽きた場合に共倒れになる恐れがあり、今は「黄昏同居」などと言うのだそうです。幸い私の実家ではそこまで深刻な状況にはなっていませんが、こうした40代~50代の中年が親と共に貧困者になるリスクが高まっている一因として、親の介護や、正社員の復帰が難しくなり、なおかつ中年向けの福祉の薄さがあると記事では指摘しています。

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日本国憲法第14条1項では「法の下の平等」がうたわれていますが、通説では差異があるものはその差異に応じた合理的な理由による区別は許容されるとする「相対的平等」という考え方が取られます。年齢に関する差別は合理的な理由であると考えられ、一般的に「働き盛り」と呼ばれてきた世代には福祉の補償が薄いのが実情です。

一方、結婚や家族の在り方についても憲法第24条において個人の自由とされており、「未婚で親と同居」という選択肢をとることも自由であるということになります。

これらの事を考えると、「未婚で親と同居」して「働き盛り」にならない事を選択したことにより経済的な利益を得られないのは自己責任であるという結論に帰着してしまいます。しかし、親の介護や働き方の違いには、親の健康状態や就職活動時の景気の動向など本人の選択によらない不可抗力である面もあり、「自己責任」で簡単に片づけられるものでもありません。

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憲法25条は国民の生存権を規定していますが、もちろんすべての経済的支援を国や自治体に委ねてしまうのも財政などの面から現実的ではありません。しかしながら、不可抗力に対してセーフティネットが保障されていないような社会では、人はリスクをとらなくなり社会全体の衰退にもつながりかねません。

「黄昏同居」という現実に対し偏見なく支援をする仕組みを構築することも、我々の社会で求められていることのようです。

日本国憲法
第14条1項 すべての国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第24条1項 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
 2項 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
第25条1項 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本経済新聞 1月15日(日)付 朝刊より
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO11578180S7A110C1TZD000?channel=DF130120166127&style=1